蟹満寺・蟹の恩返し

皆様は鶴の恩返しと言う昔話を覚えてられるでしょうか。何度も何度も繰り返し聞かれたことでしょうし、よくご存知の方が多いことでしょう。鶴の恩返しは、皆様もご存知の通り、おじいさんに助けられた鶴が、恩返しにやってきて自分の羽根を使って美しい反物を作り、それで老夫婦が裕福に暮らせるようになるというお話です。このような助けたものが恩返しにくるお話は世界中にいろいろあるのですが、では、皆様は蟹が恩返しに来るお話をご存知でしょうか。
昔、心優しい家族が住んでいました。この家族は、夫婦と娘で、特に娘は慈悲深く、日頃から観音経を読誦して観世音菩薩を信仰していたそうです。ある日、娘は村人がたくさんの蟹を捕まえているところに出会いました。蟹がこのまま茹でて食べられてしまうことを可愛そうに思った娘は、家にある魚と交換し、蟹を池へ逃がしてやりました。それから数日後、父が田んぼを耕していると、蛇が蛙を食べようとしているのを見つけました。蛙を可愛そうに思った父は、蛇に向かって「蛙を放してくれたら娘を嫁にやろう」言ったそうです。すると、蛇は父をじっと見つめた後、蛙を放して去っていったそうです。その様子を見て大変なことをしてしまったと気付いた父は、自分の軽はずみな行動を悔いたそうです。しかし、悔いても時遅く、夜になると衣冠を付けた男がやってきて、約束通り娘を出せと迫りました。困り果てた父は、娘の言うとおりに、準備があるから3日後に来るように伝えると、男は帰っていきました。それから3日の間に、娘は頑丈な板で囲った部屋を作り、籠って観音経を唱えながら男が来るときを迎えました。やってきた男は、娘が部屋に籠っているのを知り、怒って部屋を壊そうと向かって行きました。その間にも男は元の蛇の姿に戻って行き、恐ろしい大蛇となって尻尾で壁を叩き出したのだそうです。その間も、娘は部屋の中で観音経を唱え続けていたのですが、気づくと蛇の暴れる音以外に、小さな生き物がたくさん動いている音が聞こえたそうです。すると、蛇が苦しそうに鳴く声が聞こえ、やがては静かになっていったそうです。朝になって娘が外へ出ると、切り刻まれた蛇と、たくさんの蟹がいたそうです。娘が無事なことを確かめると蟹は去って行ったのですが、この蟹は観音様のお使いであったと言われています。
と、このような昔話が今昔物語集にもあるのですが、この時の蟹の死骸と蛇を埋め、その上にお堂を建てたことから始まったとされるお寺があります。蟹満寺は、京都と奈良の県境近くにあり、秦氏の一族秦和賀によって建立されたと言われています。本尊の釈迦如来は国宝にも指定されており、螺髪(らほつ)を付けていないことが特徴です。また、より多くの人を救えるように大きな水かきを付けていられるそうです。足腰痛み封じ祈祷なども行なわれているそうなので、少し行きにくい場所にありますが、機会がありましたら、一度訪れてみられてはいかがでしょう。



蟹満寺
住所:〒619−0201京都府相楽郡山城町大字綺田浜36
拝観時間:8:00〜16:00
拝観料:400円(仏像のみの拝観)
問合せ:0774-86-2577
アクセス:JR奈良線 棚倉駅 徒歩20分



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